アトピー、湿疹、皮膚炎なども鍼での治療が可能です。皮膚疾患は五臓六腑の機能失調により引き起こされたと考えます。鍼治療では特定内臓、免疫細胞の活動を正常化させ炎症を鎮めています。
実際に、当サロンの中医師のご家族の一人もひどい皮膚疾患で悩んでおられましたが、鍼治療で改善したお一人です。耐えられない痒みと痛みに悩んでいる方、ステロイド剤に頼らず自己治癒力を高めたい方は鍼治療と合わせて漢方服用もご検討ください。
漢方医学的な皮膚疾患の考え方
漢方医学理論では、「皮膚は内臓の鏡」、即ち皮膚と内臓は密接な関係にあると考えます。皮膚病の原因は様々ですが、漢方医学では内臓の機能低下、内臓間のバランスの崩れなど体質的な要因を重視。人間の生存に不可欠な三大要素(気・血・水)の不足や循環停滞なども、皮膚疾患の要因の一つと捉えます。
漢方医学的には、気血製造工場たる脾(ひ)の機能が低下すると、気の補給が滞り(=エネルギー不足)、血と水の循環も停滞してしまいます。こうした体質的な要因に加え、外部からの刺激や接触を受けて皮膚に反応が起こり、湿疹や皮膚炎など皮膚病の症状が起きると考えます。
皮膚疾患の治療に当たっては個々人の体質、ライフスタイル、食生活、環境の変化、先天的要素、気血水のバランスなどを総合的にチェックし、体質改善を目指します。
皮膚疾患の4タイプ
ここで、疾患と深い関係がある「六淫(りくいん)」についてひと言。人間も自然の一部と考える漢方医学では、気候などの環境因子の人体への影響も重視。気候の変化が正常であれば、六気という6つの気象変化(風、暑、燥、湿、寒、火)が表れ、人体の正常な活動を促進します。
ところが、気候変動が異常な時や人の抵抗力が低下した場合、六気は外邪となって人体に悪影響を及ぼします。外邪には、風邪、暑邪、燥邪、湿邪、寒邪、火(または熱)邪の6つがあり、これらを総称して六淫と呼びます。六淫は皮膚にも大きな影響を与え、様々な皮膚疾患の一因となり得ます。
湿疹や炎症を起こしている皮膚の表面をよく観察すると、以下のの4つに大別できます。
- かゆかゆ痒いタイプ(風邪[ふうじゃ])
- ジュクジュク湿潤タイプ(湿邪[しつじゃ])
- パサパサ乾燥タイプ(燥邪[そうじゃ])
- アツアツ炎症タイプ(火邪 [かじゃ])
症例の多くはこれら複数のタイプが混在していますが、症状を見極め治療致します。一例をご紹介いたします。
T君(シンガポール人男子中学生、13歳)
- 幼いころから湿疹症状などの皮膚トラブルを抱える
- 環境の変化により、症状が悪化
- 皮膚トラブルが睡眠の障害にも
- 治療前はステロイド剤を使用
- 週1の鍼治療と漢方薬を処方
- 鍼治療では炎症と乾燥対策を主に行った
体質って千差万別。乳幼児期は皮膚が弱かったけど、成長に伴い抵抗力がついて症状が消えた、というケースがある一方で、何年間も皮膚トラブルに悩まされる場合もありますね。幼い頃から繰り返し湿疹症状を抱えてきたT君も、そんな一人でした。
初診は昨年11月で、基本的に週1回治療。初診以前からステロイド剤を使用中でした。T君の症状は、昨年中学生になって生活が一変、ストレスが増えたせいか、症状が頻繁に出るようになってしまったとか。初診時は、全身にひどい痒みと赤い炎症があり、夜中も熟睡できない状態でした。
T君の肌タイプに合わせた鍼治療
診察の結果、痒いタイプと湿潤タイプの混合型と診断。治療は漢方薬と鍼施術に決定しました。 処方漢方薬は、消風散(痒みに威力を発揮)と参苓白朮(湿潤を改善)、地膚子(主に痒みを軽減)をメインに、体調により微調整。
鍼は、まずひじの外側(炎症対策)とひざ上の内側(乾燥対策)に施術。実はT君、当初「痛いんじゃない?」と鍼施術を嫌がっていたのですが、徐々に慣れてくれました。
施術箇所はその時々の体調に応じて、例えば、免疫力が低下気味の時はひざ下の外側、テスト前でストレスが高じている時は両手足の親指と人差し指の間にも打ちます。週1回の治療のかいあって、症状も軽減されつつあります。
皮膚の痒みって、実は便秘と関係がある場合もあるんですよね。この続きはまた次回。
※本コラムでご紹介する症例は、今回に限らず、全て患者ご本人(未成年者の場合は保護者の方も)のご了解済みです。